2016年12月18日
歴史と伝統文化講演会 ― 初めての能と謡にふれよう
尾張町商店街「歴史と伝統文化講演会」の今年度第7回目(今年度は全部で10回シリーズ)の「初めての能と謡にふれよう ~ 能のお話しと謡を体験しよう~ 」と題した講演会は12月17日(土)、藪 俊彦 氏(シテ方宝生流 能楽師)を講師にお招きし、悪天候にもかかわらず多数の方の参加のもと、ここ尾張町老舗交流館にて開催致しました。
藪先生の当講演会でのご登場は2回目です。1回目は、ほぼ1年前の12月19日でした。
その1年前の講演では、質疑応答の場面にておいて、先生の『実演』をまじえた解説がなされ、その際の、「能」というものの「生の断片」にじかに触れることの出来た質問者達の間で、言い知れぬ感激が沸き起こったことが思い起こされます。
そんなこともあり藪先生の、再度の講演が待ち望まれていました。
前回は「能」というものの概要、その魅力、観方、文化的価値を座学的に
語って頂いたわけですが、今回は写真にもありますように、和服姿で登場された先生はテーブルの方には着座なさらず、畳の上に端座されて「ここでやります」とおっしゃられました。
そのことは、今日の講演の、ただならぬ雰囲気を参加者一同の胸中に感じさせたました。(通常は、講師の先生は、当館の大テーブルの中央に着座されて座学的に講演を行います。)
先生は、県立能楽堂で明日(18日)開催される「慈善能」の、「七騎落(しちきおち)」(藪先生がシテとして出演)を題材にとられ、これの解説を軸に「能」の話を進められました。
特筆すべきは、物語の中の肝心なところでは、舞台の上でのごとく、腹の底からの、朗々たる美声にて 台詞を放たれたことでした。
そして、ことが刃傷や自害といった大変な場面にさしかかった場合での、これらの所作を諌める「 あ~ しばらく !」の台詞を、参加者の皆にも演じてもらったことでした。最初は腹の底から声が出なかったり、間髪を容れずのタイミングが悪かったりで、先生からのNGが連発しましたが、次第に旨くなり、皆、まさに「能」を体感できたひと時でした。
質疑応答も活発になされ、藪先生を囲んでの濃密で有意義な講演会となり、「能」と「謡」がよりいっそう身近になったことでした。
次回は、来年の1月21日(土)「金沢町家について~ 町家って何? 何が違うの?~ 」(講師:金沢工業大学教授 増田 達男 氏)です。