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2020年2月16日

歴史と伝統文化講演会 ー 「 加賀藩主 前田家の隠居政治 」

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今年度で第6回目の実施となる尾張町商店街「歴史と伝統文化講演会」の、令和1年度第9回目(今年度は全部で10回シリーズ)の「 加賀藩主 前田家の隠居政治 」と題した講演会は令和2年2月15日(土)木越 隆三 さん (石川県金沢城調査研究所 所長)を講師にお招きし、多数の方の参加のもと、盛大に開催されました。

 

加賀藩政史を中心とした日本近世史のスペシャリスト 木越先生が本日の講師です。先生は「加賀藩改作法」研究などの分野においても第一人者です。

また、NHKブラタモリの金沢編のときに、タモリ・桑子さんご両人の案内役を見事につとめられ、歴史マニア以外の人たちの間にも大いにその存在を知らしめられた、その木越さんです。

 

 

本日のテーマは「加賀藩前田家の隠居政治」というものですが、斯界に通じている方以外は落語などに出てくる、気のいい「ご隠居さん」などのイメージが浮かぶかもしれません。
しかし、「前田家の隠居」というテーマなのですから、そんな気軽な「ご隠居さん」なわけはないだろう、との推測のもとに(少なくとも筆者は)講義を拝聴しました。
(まさにその通りで、加賀藩という大藩の(政)まつりごとを執り行うお殿様の「隠居」ですから庶民の「隠居」とは大違いでした。藩政の実権掌握が伴っており、実質的には藩政を執り行っている場合もあったのです。)
 

前田家14代において、7人が隠居をしたそうです。

 

歴史上の大立者の、信長、秀吉、家康の三人とも隠居し、その隠居後に数々の偉業を成し遂げた、と木越先生は説明されました。

 

元来、隠居(大名隠居)は、封建的主従関係からの離脱ですから、素直に許される性質ものではないのですが、大名の長寿化、無嗣・養子の家の家督相続の円滑化を図るため等もあり、1651年以降からは、隠居大名が増えたようです。

 

先にも述べたように、前田家においては、14代のうち、7人が隠居をしています。
穏当な隠居政治が多かった前田家ではありましたが、3代・利常と10代・重教の場合は異例であったようです。
ということで、木越先生の本日の講演は、利常の隠居政治、重教の隠居政治にフォーカスを当ててのものでした。

 

ということで利常の隠居です。
なぜ利常が47歳の若さで隠居したのか、について先生は
前田家4代の光高は、将軍家光の実の甥であり、家光からの信頼・寵愛が深く、このため利常に対する、将軍周辺からの隠居を望む空気があり、それを察しての利常の隠居ではなかったか、というような説明をされました。

 

大変納得ですね。とても明快な説明でした。

 

でも利常は、隠居後も実権を握り、藩政の政務を執り行ったのです。
藩主たる光高領は80万石でしたが、サイフは利常が握っていたようです。
利常は藩領を4分割した( 光高に80万石、次男利次に10万石(富山藩)、三男利治に7万石(大聖寺藩)、そして自分用に隠居領として22万石、というふうに )のですがそれはなぜか。

 

光高、利次、利治ともに将軍家光の実甥で、3兄弟とも江戸城殿中で
厚遇されており、次男、三男らへの分家は、このような将軍の思いを利常が察し、そのほうがお家安泰にもなるとの判断から出たもの、というような説明でした。

 

これまた先生の明快な解釈、説明でした。

 

疑問がすう~っと氷解された方も多かったのではないでしょうか。

 

その後、利常は、5代 綱紀のときも後見人として藩の政務を執り行い、農政改革である改作法を実施しているわけですね。

 

このように隠居の立場でありながら、積極的に藩政にかかわった利常と対比させるかたちで先生は重教の隠居を取り上げられました。
重教は兄の急死で(晴天の霹靂といった感じで)藩主の座が回って来、それも14歳という若年であったがために、藩主たる覚悟も乏しく、八家の画策した経済政策の失敗、宝暦9年の大火等もあり、藩財政は危機に陥り、藩主が嫌になり隠居を決意したということです。
このときは、一度仏門に入っていた弟 時次郎(治脩)を還俗させ、これに家督相続をしての隠居でした。

 

このように利常の隠居と重教の隠居はかなり特異の、両極にある事例です。

 

このような、江戸時代の大名の、隠居にいたる経緯、隠居政治の内実をお聞きして、殿様の苦労、大変さというものがよく伺い知れると同時に、主従性、家父長制の支配した封建制の時代の不合理、不条理がよく理解できた本日の講演でした。

 

本日の講演テーマのいずれの局面においても、木越先生の説明は、精緻かつ明快で
たいへん解りやすく、参加者一同、学びの多かった一日となりました。
心より感謝申し上げます。

 

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次回は、3月21日(土)、「 近代バイオテクノロジーの父「高峰譲吉のすべて」 」(講師:金沢ふるさと偉人館 学芸員 増山 仁 さん) です。

高峰賞でおなじみの、金沢の生んだ偉大な科学者であり国際人である「高峰譲吉」さんがテーマです。氏の功績、業績、人柄を存分に語って頂きます。

どうぞ皆様 お楽しみに !!!

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