尾張町 老舗交流館 ロゴマーク

尾張町ホームページへ

Archive

2024年12月
« 10月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

2019年10月20日

歴史と伝統文化講演会 ー 「 伝統の中の独自性 ~ 九谷より世界へ ~」

P1000699

今年度で第6回目の実施となる尾張町商店街「歴史と伝統文化講演会」の、令和1年度第5回目(今年度は全部で10回シリーズ)の「 伝統の中の独自性 ~ 九谷より世界へ ~」と題した講演会は令和1年10月19日(土)四代 德田八十吉 さん (徳田八十吉陶房)を講師にお招きし、悪天候にもかかわらず多数の方の参加のもと、盛大に開催されました。

 

本日は、特別講演と称して、平成22年に、人間国宝であられた三代目の父君の後を襲名された四代 八十吉さんのご登壇を頂きました。

三代・父君と同様に、あの大英博物館での展示作品を生み出された四代 八十吉さんのご登場なのです。

 

四代 德田八十吉さんは( 以下 德田八十吉さんとだけ記す )、皆様ご承知のように、近時、病気を患われ、本日の講演も、病院から駆けつけて頂くという状況でした。

開口一番、「・・・何があっても、今日の講演は、今日の1時間30分は、ここへ来て、皆さんとの 講演の約束を果たさねば・・・の思い出やって来ました・・・」と語られました。

本当に感謝、感謝、感激です。

 

そうなのです。德田八十吉さんは今 病み上がりで体調は万全には程遠いのです。 お痩せになって、声も必死で絞り出すがごとくで、しかし、その分 魂の底から訴えかけるがごとくで 我々聴衆の心の奥底に届く講演でした。

 

本日、德田八十吉さんは、豊富な画像、あるいは、テレビで放映された数々の動画等を用いられて、徳田家代々の作品の特徴、 ご自分の作品についてのヴィジュアルな紹介、解説、八十吉さんの日ごろの創作活動、作品の展示活動、 八十吉さんご自身の人となり等々、を丁寧にご説明されました。

 

そして、 徳田家独自の 色の作製秘伝( 釉薬の調合 方法 )、德田八十吉さんの作風の特徴でもある「色の グラデーションの産み出し方」の秘訣等々をも 惜しげもなく語って頂きました。

 

また、ご自身の、九谷焼作家になられた経緯をお話になられました。

明治期から続く九谷焼の名門の長女として生まれ、幼い頃から父の背中を見て育ったが、 九谷焼作家になるとは思っておられず、普通に結婚し、家庭に入るという漠然とした将来像を抱いていたが、 ご自身のルーツを再確認し、九谷焼技術研修所を卒業後、作家としての道を歩み始められたこと、 父君の亡くなられた後、四代目を襲名し、戸籍名も順子から八十吉に改められたこと。

 

しかし、陶房の経営の困難にも直面し、陶房をやめようかと思った時があった、などの苦労話もされました。

 

また、八十吉さんは、20代の初め頃、NHK金沢のキャスターをおやりになっていたので、この尾張町界隈には 思い出がいっぱい、との回顧談もされました。

 

作品を産み出すにあたっての、モチーフとなったものにも話は及びました。

陶房前の田んぼで実りの秋を迎えて風に揺れる稲穂をヒントにした『瑞穂』のお話、 代表作のひとつでもある『昇龍』のモチーフとなったもののお話、”何億光年 輝く星にも寿命があると・・・・”の 歌いだしで始まる山口百恵さんの「さよならの向こう側」の歌などもモチーフになったことがある・・・・などなど。

 

ご自身の病気のことも語って頂きました。

闘病生活をご経験されて、八十吉さんのご自身の御身と重ね合わせるように、 次の詩を紹介なさいました。

 

************************ ***

病気になったら 心ゆくまで感動しよう

食べられることがどれほどありがたいことか

歩けることがどんなにすばらしいことか

新しい朝を迎えるのがいかに尊いことか

忘れていた感謝のこころを取りもどし

この瞬間自分が存在している神秘

見過ごしていた当たり前のことに感動しよう

またとないチャンスをもらったのだ

いのちの不思議を味わうチャンスを

( 病気になったら (晴佐久 神父 作)  )

***************************

 

八十吉さんの、死生観、覚悟を語って頂きました。

病を乗り越えられて、( リセットをして ) 今 また新しいスタートを切ったのだ・・・と。

塗り分け、重ね、その釉薬が流れて溶け合い、 その先に 神秘的にも あざやかに出現するグラデーション・・・

八十吉先生には、まだまだ その先を、そのまた先をこれからもずっと私たちに見せて頂けるように心からお願いいたします。

 

P1000693

P1000695

 

次回は、11月16日(土)「 金沢を愛した室生犀星 」(講師:室生犀星記念館 学芸員 嶋田亜砂子さん)です。

本年度は、泉鏡花記念館の穴倉さん、徳田秋聲記念館の薮田さんが すでにご登壇されており三文豪記念館のお三方のそろい踏みとなるわけです。

犀星記念館の嶋田さんが、そのしんがりを務められることとなったわけです。

どのような「犀星」論を語っていただけるのか 楽しみですね !!!**********************************************************************

ブログトップへ