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2022年6月19日

歴史・伝統文化講演会「加賀藩の明治維新」

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本日(令和4年6月18日)久々の、尾張町商店街「歴史と伝統文化講演会」です。
久々とは、先回の、「 加賀藩主 前田家の隠居政治 」と題した木越 隆三 さんの
講演が、令和2年2月15日(土)に行われて以来の、実に2年と4カ月ぶりだからです。
 
ずっと新型コロナの感染拡大予防のため休止していました。
 
コロナが収束したわけではありませんが、効果的な予防対策の方法がこの2年余の学習・経験により
よりよく分かってきましたので、講演会再開の運びとなったわけです。
但し、密を避けるため、各回定員は(原則として)10名とさせて頂いています。
 
尾張町商店街「歴史と伝統文化講演会」も今年度は、数えて第7年目となりました。
 
本日の講演は、金沢市立玉川図書館近世資料館 学芸員の宮下和幸氏を講師にお招きし、
「加賀藩の明治維新」と題して実施いたしました。
( 今年度第2回目の講演会です。第一回目は、5月21日の予定でしたが
講師の石田順一さんのご都合により、来年度以降に延期とさせて頂いております。 )
 
「北陸の大藩である加賀藩は、幕末の激動期ににおいて目立った動きを見せずにいたため
加賀藩=「日和見」とのラベリングがなされてきた。しかし、それは正当な評価なのだろうか。
「賤ケ岳の戦」、「関ヶ原の戦」などにおける前田家の立ち位置を浅薄に見る見解から
前田家を「日和見」とする見方が従来からあり、このような考えの延長線上で幕末・明治維新期の
加賀藩を安易に「日和見」とラベルづけしてきた、ということではないのか。
本当のところはどうなんだろう」というのが本日の宮下氏の講演における命題
なのではないかと、筆者には思われました。
 
この命題に、明解な回答を与えるべく、宮下氏は以下に述べるアプローチで、加賀藩の
幕末・維新期において取った行動、その背景にある行動原理及び真なる事実の解明に迫られました。
 
明治維新とういものの歴史講学的とらえ方として、氏は「王政復古史観」、「薩長中心史観」、
「皇国史観」、「マルクス主義歴史学」の方法論、「近代化論」の各方法を上げられ
それぞれの優劣を説明され、これらの手法の盛衰から、ここに維新期の加賀藩の研究についての可能性
が出てくると結論づけされ、加賀藩について巷間言われている「日和見」性の真偽についての
論及がなされました。
 
日和見なる態度を考えるときには、そこに二択的な選択肢があり、どちらが損か得かの見地からの価値判断が
伴う。ここでの場合、天皇側か、徳川側か(勤王か佐幕か)の二択である。
 
氏はここで、「天皇への忠節(勤王)と佐幕」はもともと二律背反的なものではない、と説く。
天皇は徳川に政治を委託していたのであり、佐幕の立場を採ることを通して、そこから論理的に
勤王の立場へと矛盾なく繋がっていたのだ、というふうに説かれた、と筆者は理解しました。
加賀藩は、元来ずっと勤王というものが根底にあり、時々の、具体的な対応において、徳川幕府
支持などといったことがあるのであり、このことが勤王の立場を損なうわけではない、ということを
氏は仰ったと理解しました。
 
戊辰戦争での加賀藩の対応を、「朝廷尊崇の貫徹と徳川家支援の挫折」というふうに氏は捉えられました。
まことに明快な説明です。
「鳥羽・伏見戦争」の当初において、徳川側につこうとしたのは、この戦いが、徳川と薩長の
戦と見たからであり、朝廷が新政府(薩長)側に「錦の御旗」を与えて以降、新政府側として
加賀藩がこの戦に参加したことは、日和見でもなんでもなく、正義に基づく行動なのだ、と
いうふうに氏は説かれたわけであります。
県民としては、日和見という嫌疑を払拭する、痛快な説明です。
 
氏の編纂にかかる、近世資料館平成27年度特別展「幕末維新期の加賀藩」のパンフレット中の、
「・・・・徳川家が正義であるため助け合い尽力することは当然・・・薩摩についても正義に基づいて
行動するのであれば従うことも可能・・・」、「・・・徳川家が朝敵となったことや前田家の朝廷への
忠誠を示すため・・・」という方針変更、といった前田慶寧の対応は、加賀藩の「日和見」性を
覆すものと思われました。
 
宮下氏の本日の講演の骨子は、以上の如くと筆者は理解しました。
この点、間違いがありましたら是非ともご指摘ください。
 
 
かくして本日の宮下氏の講演は、参加者皆の心中を、「痛快さ」、「一服の清涼感」、
「新知識を得られた充足感」、で満たして終演となりました。
 
宮下先生、本日はたいへん有難うございました。皆、次もあれば、と心から願っています。
 
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