尾張町 老舗交流館 ロゴマーク

尾張町ホームページへ

Archive

2024年3月
« 10月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

2019年2月17日

歴史と伝統文化講演会 ー 「 伝統を受け継ぐとは」

P1000607

今年度で第5回目の実施となる尾張町商店街「歴史と伝統文化講演会」の、平成30年度第9回目(今年度は全部で10回シリーズ)の「 伝統を受け継ぐとは 」と題した講演会は平成31年2月16日(土) 田中 瑛子 氏 (山中漆器 木地師)を講師にお招きし、多数の方の参加のもと、盛大に開催されました。

 

輪島塗、金沢漆器と並び称される山中漆器。

その中の「山中木地挽物」は石川県指定無形文化財になっています。

漆器の材料となる木を削り出し、美しいフォルムをこの世に生み出す若手木地師として

活躍されているのが田中さんです。

 

山中独自の木地挽物技術に魅せられ、愛知からここ石川の山中までやって来られました。

木地師としてだけではなく漆塗り工程までこなす作家さんとしても活躍されている田中さん。

そんな田中さんに、山中漆器の成立ち、歴史、山中漆器の特色、製造工程、そして

田中さんの作家として目指す方向、芸術観、人生観を存分に語って頂きました。

田中さんのお話は、そのすべてが活き活きしていて、そして聞いているこちら側は ワクワクの連続でした。

木地師としての技術習得におけるご苦労、愛知から石川・山中へ生活拠点を移されたことによるご苦労、木地師として 独り立ちするにあたってのご苦労、女性であるがゆえのご苦労、そういうものはいっぱいあったでしょうに、この山中漆器を作り出す喜びにかき消されてか そんな苦労は微塵も感じさせない田中さんのお話ぶりでした。

 

田中さんの講演の特徴として以下のことを上げなければなりません。

それは説明の端々で、田中さんの闊達でおおらかな笑顔が見られたこと。 それも力強い、ささいな困難などはあっというまに吹き飛ばしてしまいそうな笑い声 をともなってのもの。

聞いているものは、田中さんのこのような明るく、ポジティブな話の運びにより、山中漆器の魅力、田中瑛子ワールドの魅力に とっぷりはまったことでした。

本日は、加賀市大聖寺の趣のある町屋でカフェ&工芸ギャラリーをやられている山根さんもお見えになっていただいて 講演をいろいろとサポートしていただきました。有難うございました。 ( FUZON KAGA Gallery and Bar  と  FUZON KAGA Cafe and  Studio の2軒。 山根さんはここのマスターであり、バリスタ、パティシエ、アートディレクターの何役もこなされています。ここで田中瑛子さんの作品に出会える わけです。山根さんと田中さんのこのようなコラボがますますうまく行き、さらに発展されることを祈念します。 )

 

田中さんの講演を聞き終えて思ったこと、持参された田中さんの作品を 拝見して思ったことは・・・・ああ、この人は神様ともコラボしているんだろうな っていうこと。

自然が綾なした樹木(神がつくりたもうた樹木)を削り出し、磨き上げて生み出された田中さんの作品・・・手触り心地よく、 優美でチャーミングな田中さんの作品。(田中さんの優美さ、チャーミングさがそのまま具現されたような作品。)

抽象のものから具象の、アートをまとったカタチを現出させる・・・まさに神とのコラボではないでしょうか。

きっと田中さんの手も神の手なのでしょうね。

田中さんがかつてニューヨークで合同展を行ったとき、ニューヨークの人から「これ・・・見たことある」とか 「あなたはどういうカタチを作りかったの・・・」などとの感想をぶつけられ、田中さんは「私らしさがなかった」と 思ったそうです。工芸品は日用品であり、職人仕事は均一性が求められるのが通常とのことですが、 田中さんは、”私らしさ” の実現のために既成概念を破って、ご自分の個性を前面に出そう、とされたそうです。

職人でもあり、アーティストでもありたい、という思いなのですね。

 

歴史と伝統の重み、深みのある山中漆器ですが、近年は衰退の懸念があるとのこと。

田中さんのような方の活躍で、新しい作品を世に問い、山中漆器の新しい世界を切り拓き、後進の 絶えることなき状況を作り出して頂く事を切望します。

 

素材として田中さんは、「栃の木」をよく使われるそうです。 栃の木は木肌が白地で無垢なため(作家の)個性が出しやすいそうです。

 

当館に、2~3年前の秋ごろだったか、妙齢の女性が入ってこられて、

 

「 山中漆器をやりたくて石川にやってきました。今は金沢にいますけど、近々 山中に移ります 」と固い決意を述べられました。 「今日はこれからバイトに行くんで・・・」と短い時間で当館を後にされました。

田中さんに本日お会いして、この女性のことを思い出しました。

彼女も今頃は山中で木地師か塗師になってるのだろうか・・・。

そう言えば、この女性は「栃木から来ました」と言ってました。

純粋で無垢そうな方でした。

今回の講演会報告、最後は「栃の木」つながりで締めさせて頂きます。

 

以下は、本日お持ちいただいた田中さんの作品。

P1000611

 

P1000612

 

 

次回は、3月16日(土)「 金沢の文化を知る ~ 芸妓さんから見た金沢 」(講師:金沢主計町 芸妓さん 中乃家 桃太郎 さん) です。

主計町一番の人気芸妓である桃太郎さんが、どんな金沢論、芸妓論を語られるか、

とてもわくわくしますね、待ち遠しいですね !!!

ブログトップへ